『イリュージョニスト』感想

2011/7/30 目黒シネマで鑑賞。


1950年代のパリ。かつての人気も今は昔、初老の手品師タチシェフは、寂れた劇場や場末のバーを巡るドサ回りの日々。そんなある日、スコットランドの離島を訪れたタチシェフは、ひとりの貧しい少女アリスと出会う。手品師を何でも叶えてくれる“魔法使い”と信じ、島を離れる彼に付いてきてしまうアリス。やがて、言葉も通じないながらも一緒に暮らし始めた2人。落ちぶれた自分を尊敬の眼差しで慕うアリスに、いつしか生き別れた娘の面影を重ね、彼女を喜ばせるべく魔法の呪文とともにプレゼントを贈り続けるタチシェフだったが…。

[出典]http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=338328%3Ca%20href=




※以下、ネタバレあります※






魔法はいつかとけるもの。それでも、たしかに2人は幸せだった。



以前の上映期間のときは気になりつつも観られなかったのですが、最近目黒シネマでやっているというのを知り行ってきました。本当に本当に素晴らしかった!!きっかけをくれたid:itottoさんに感謝です。今も公式サイトの曲を聴きながら書いてるんですが、聴いてるだけで感極まってますw

お話としては、あらすじに書いてあることがすべてです。本当にシンプルな物語なんですが、その描き方がとても丁寧で優しくて好感を持ちました。タチシェフとアリスを軸に、脇のキャラクターも出番は少ないのにしっかりと性格付けがされていて、それが物語に生かされている。酔っ払いの気の好いおっちゃん(スカートが可愛いんだこれが)、ピエロの腹話術師、人生を終わらせようとしていた男…。すべてのキャラクターに愛を感じました。

そして兎にも角にもアニメーションが素晴らしい!!!画面全体の描きこみが細かく美しくて、いちいち画になります。すべてのシーンのポストカードが欲しい!
パンフレットも買ったのですが、この作品って全部手描きで、線が微妙に歪んでるんですよね。真っ直ぐなハッキリした線が一本もない。それが作品の世界観をより一層際立たせています。まさに"イリュージョン"!
色使いも素敵で、全編に亘ってうす暗い色を使っているのですが、明るい色を使っているものがいくつかあります。赤い靴に真っ白なコート、真っ白なハイヒール、そして水色のワンピース。これらはすべて、アリスにとっては"魔法使いのタチシェフが魔法で与えてくれたもの"です。画面全体がうす暗い中の妙に明るい色=画面から浮く=現実感がないんですよね。この表現は控えめ且つ分かりやすくて好きでした。

最後、いろいろなものが終わっていくラストには涙が止まりませんでした。手品師としてのタチシェフ、老舗のミュージックホール、そして魔法。クライマックスで、それまで平坦だった画面の視点が急に変わるシーンがあるのですが(あれは魔法がとけた瞬間を表していると思いますが)すごく綺麗でした。

魔法はいつかとけるもの。でも終わっていくだけじゃない。アリスのこれからの人生はきっと新しく紡がれます。"イリュージョニスト"であることをやめたタチシェフだってきっと。タチシェフはアリスに「魔法使いなんていない」と書き残して去ったけれど、たしかに"魔法使い"は存在したと私は思います。



【ひとことメモ】

  • 監督、脚色とキャラデザはいいけど作曲までやってたんだ…!シルヴァン・ショメに涙搾り取られたよ!!
  • 曲が良すぎたのでサントラ注文しちゃいました。監督自身が作曲しただけあって、場面場面に合うんだなー。
  • ロックンロールバンドのボーカル最高wwwあの背中ズリズリやる動きは監督のツボなんだろうか(笑)
  • 酔っ払いのおじさん大好き!!草むらをころがり落ちていくとこ可愛かった〜。